就業規則・労務管理・労基署対応に関するQ&A

就業規則・労務管理・労基署対応に関するQ&A

Q労働基準監督署の監督とはどういうものですか?

A

 労働基準監督署の監督は、定期監督、申告監督、災害時監督、および再監督の4種類あります。

 

定期監督

 厚生労働省が、その年度に力を入れる項目を定めた方針を作成し、その方針に従って、毎月定期に行われます。
 労働基準監督官が、事業場(工場や事務所等)に立ち入り、機会・設備や帳簿等を調査して関係労働者の労働条件について確認を行います。
 原則として、予告は行われず、突然来訪します。
 定期監督で発覚する主な法律違反事項は、以下のとおりです。
 ・時間外労働・休日労働に関する協定届(通称36協定)を提出せずに、時間外労働を行わ

  せた。

 ・36協定の協定時間を上回って時間外労働を行わせた。

 ・機械や設備等の安全基準を満たしていない。

 ・健康診断を実施していない。

 ・就業規則の作成・変更を届け出ていない。

 ・労働条件(賃金、労働時間、職務内容等)を書面で明示していない。

 ・賃金台帳の作成・保存がされていない。

 

申告監督

 労働者の申出により行われます。

 申告をした労働者が会社に在籍している場合は、その労働者の氏名を労働基準監督官が明かすことはまずありません。

 申告をした労働者が会社から不利益な取り扱いを受けることを避けるためです。

 よって、申告した労働者がすでに会社を退職している場合は、氏名を教えてくれることもあるようです。

 定期監督で発覚する主な法律違反事項は、以下のとおりです。

 ・賃金(主に、割増賃金)を支払わなかった。

 ・不当な解雇を行った。

 ・賃金が最低賃金を下回っている。

 

災害時監督

 労働災害が発生した場合に行われ、災害の原因を探り、再発の防止に努めるために行われます。

 災害時監督で発覚する主な法律違反事項は、以下のとおりです。

 ・機械や設備等の安全基準を満たしていない。

 

再監督

 是正勧告(監督の結果、法律違反が認められた場合に、事業主等に対し、その是正を指導すること)、使用停止命令を出した法律違反の是正状況を確認します。

Q従業員の健康管理は何をしなければなりませんか?

A

 健康管理の大きな柱は、健康診断の実施です。

 労働安全衛生法に規定されており、いくつか種類がありますが、最もよく知られているのが定期健康診断でしょう。

 1年以内ごとに1回、常時使用する労働者を対象に行う必要があり、その結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について医師又は歯科医師の意見を聴くとともに、聴取した意見を健康診断個人票に記載しなければなりません。

 なお、パート労働者の場合は、期間の定めのない契約か、期間の定めのある契約の場合は1年以上の使用が予定されている又は更新により1年以上使用されていることに加え、1週間の労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば、健康診断の対象となります。

 このほかに、雇入れ時の健康診断や特定業務従事者の健康診断等、労働安全衛生法には計9種類の健康診断が定められています。

 中小企業では定期健康診断を実施していない企業も多くありますが、何らかの事情で労働者が心身に不調をきたし、労災認定されたとすると、定期健康診断の実施を怠っていた企業側としては労働者の健康状態を把握し、医師等の意見を聴き、必要な措置をする機会を逸している訳ですから、安全配慮義務違反として労働者から損害賠償請求をされる可能性が大いにあると考えられます。

 定期健康診断の実施を怠ることは、大変にリスクの大きいことですので、必ず実施していただきたいところです。

 また、平成27年12月1日からは、50人以上の労働者を使用する事業場でストレスチェックの実施が義務付けられました。

 残業時間が月100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者や、ストレスチェックの結果一定の要件に該当する者から申出があった場合は、使用者は医師による面接指導を実施し、その結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。

 何か起きてからでは遅いですから、上記のような制度を通じて健康状態の把握に努め、さらに労働時間の把握し、健康状態に不安のある者や長時間労働者がいれば、業務分担の見直しや配置の変更等を随時検討することが大切です。

Q過半数代表者とは何ですか?

A

1 過半数代表者とは、労働者の過半数を代表する者です。

 就業規則を作成・変更した際の意見聴取や労使協定(労働者と使用者の約束を書面化した協定)を締結する際に、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、過半数代表者を選任する必要があります。

2 過半数代表者は、以下のいずれにも該当する者でなければなりません(労働基準法施行規

 則6条の2)。

 ① 労働基準法41条2号に該当する「監督又は管理の地位にある者」でないこと

 「監督又は管理の地位にある者」とは、一般的には、部長、工場長等、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものとされています(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)。

 ② 法に基づく労使協定の当事者、就業規則の作成・変更の際に使用者から意見を聴取され

  るもの等を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きによ

  り選出されたものであること

 投票や挙手等の方法以外の方法としては、「労働者の話し合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当事者の選任を支持していることが明確となる民主的な手続」(平成11年3月31日基発169号)がこれに当たるとされています。

 ③ 使用者の意向に基づき選出された者でないこと

3 また、使用者は、過半数代表者が法で規定されている協定等に関する事務を円滑に遂行す

 ることができるよう必要な配慮を行い、次のいずれかを理由として、不利益な取り扱いをし

 ないようにしなければなりません。

 ① 労働者が過半数代表者であること

 ② 労働者が過半数代表者になろうとしたこと

 ③ 労働者が過半数代表者として正当な行為をしようとしたこと

Q労働時間の把握義務とは何ですか?

A

1 労働基準法上の労働時間の把握義務

 労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有しています。

 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにしたものが、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」とします)です。

 ガイドラインでは、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻の確認、記録が求められています。

 始業・終業時刻の確認、記録の原則的な方法は原則として次のいずれかの方法によります。

 ① 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。

 ② タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として

  確認し、適正に記録すること。

 ガイドラインの全文は厚生労働省ホームページで適宜ご参照ください。

 

2 労働安全衛生法上の労働時間の「状況」把握義務

 労働安全衛生法において、会社は、1週間当たり40時間を超える労働(休日労働を含む)が1か月当たり80時間以上(研究開発業務に従事する労働者については100時間以上)となった労働者(疲労の蓄積が認められる者)から申し出があった場合に、医師による面接指導を実施しなければなりません。

 そのため、労働時間の「状況」把握が必要となりますが、労働安全衛生法上の労働時間の「状況」の把握とは、労働基準法における労働時間の把握として求められている、労働日ごとの始業・終業時刻の把握ではありません。

 あくまでも、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供しうる状態にあったかを把握する目的で行うもののため、労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻等の把握で足りるとされています。

 また、労働時間の「状況」の把握は、その目的からして、時間外手当の計算等に使用する労働時間の把握ほど厳密さは要求されていないため、休憩時間等を除くことが困難である場合は、休憩時間を含めた時間で管理してもかまわないとされています。

Q年次有給休暇の時季指定義務とは何ですか?

A

1 年次有給休暇

 労働基準法では、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的として、使用者は一定の要件を満たす労働者に対して、毎年一定日数の年次有給休暇を付与することを定めています。

 年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季(季節と具体的時期の双方を含む概念で、労基法ではこのように表現します。)に与えることとされていますが、職場への配慮やためらい等の理由から取得率が低調な状況にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

2 年次有給休暇の時季指定義務

 上記の理由により、労働基準法が改正され、2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち、年5日については、基準日(年次有給休暇が付与される日)から1年以内に使用者が時季を指定して取得させることになりました。

 ただし、労働者からの時季指定によって付与された日数または労使協定に基づき計画的に付与された日数については上記5日から控除されます。

 また、使用者が時季を指定する際は、その付与する時季に関し、あらかじめ労働者からの意見聴取をしなければならず、その意見の尊重に努めなければなりません。

3 年次有給休暇管理簿

 使用者は、労働者に年次有給休暇を付与したときは、時季、日数および基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年次有給休暇を付与した期間中および当該期間の満了後5年間保存しなければなりません。

4 罰則

 年次有給休暇をそもそも付与しない場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法119条)とされていますが、時季指定による5日の付与義務に違反した場合には30万円の罰金とされています(労働基準法120条)。

5 厚生労働省サイト

 厚生労働省の働き方改革特設サイトに年次有給休暇の時季指定についてのページがありますので、適宜ご参照ください。

Q有給休暇の基準日を統一する際の注意点はありますか?(いわゆるダブルトラック)

A

 働き方改革に伴う労働基準法の改正により、使用者は、有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、基準日(有給休暇の付与日)から1年以内に最低5日取得させなければならないこととなりました。

 企業は、入社日に応じてばらばらに付与される各従業員の有給休暇の取得日数を正確に管理する必要があり、有給休暇が付与される日、いわゆる基準日を統一することが一つの対策として考えられます。

 例えば基準日を毎年1月1日や4月1日等に統一するため、労働基準法に定められた基準日を前倒しする設定をする方法は一見単純で分かりやすいですが、有給休暇を5日取得させなければならない「基準日から1年」の期間に重複が生じることになり、労働基準法上、実質的に「1年以内に5日」よりも多くの有給休暇を取得させなければならないことになってしまいます。

 これを「ダブルトラック」と呼んでいます。

 このようなダブルトラックの不都合を解消するため特例が設けられており、重複している2つの期間のうち、前の期間の始期から後の期間の終期までを通じた期間の長さに応じた日数(「1年について5日」の割合で按分した日数)を当該期間に取得させることが認められています。

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